さまざまな意見が飛び交う中、結局東京オリンピックは進んでいます。
普通どおりに開催されるなら、東京の街中で迷う観光客に「May I help you?」などと声をかけて、英語でのやりとりを楽しみたかったなぁと残念に思っています。
オリンピック選手たちの活躍はもちろんですが、関係者が日本の文化にどう反応しているのかを見るのも楽しいですね。
先日、あるニュースサイトがアメリカ人記者がコーヒーの自動販売機についてツイートしたという記事をアップしました。
【画像】「魔法使いのマシンのようだ」と米記者興味津々! 日本人には馴染みがあるが…米記者が挑戦した自動販売機の実際の写真
ツイートされた写真がこちらです。
I … may have tried this coffee machine just to see how it works/hear the song it plays. Hi, I’m Kate. pic.twitter.com/9ibKwTQwwH
— Kate Bennett (@KateBennett_DC) July 22, 2021
こ、これはすごい自販機ですね・・・。日本人であるわたしでも本当に欲しい飲みものを買えるのか自信がありません。
このツイートを紹介したニュースサイトでは、"米放送局「CNN」のホワイトハウス担当ケイト・ベネット記者は「どう購入するのか(動画を)見て/曲を聞いて、このコーヒーマシーンにトライしました。こんにちはケイトです」と文面につづって実際の写真を公開した。"と解説されていました。
これを読んでわたしは「あれ?これって、この人はこのマシンに本当にトライしたの?」という疑問を持ちました。
I … may have tried this coffee machine
just to see how it works/hear the song it plays.
Hi, I’m Kate.
may have tried だから、「トライしたかもしれない=トライしてない」じゃないの?
今回は、彼女がマシンにトライしたかしてないか、について書いてみます。
※このツイートのみでわかることを書いています。ツイートに対するコメントはまったく読んでいません。
ちょっとしたニュアンスがわからないときってありますよね
Contents
結論:これだけではわからないけど高い確率でトライした
いきなり結論からいきますが、「高い確率でトライした」のがネイティブスピーカーの見解でした。
わたしは「トライしていない」確率が高いと思っていたため、実際どうなのか?をオンライン英会話Camblyの先生(カナダ)に訊いてみたところ、この回答でした。
え、そうなの??
先生:わたしはこの人を知らないから何とも言えないけど・・・まずは何言っているかわからないツイートね!
わたし:わたしもこの人をよく知らないからよくはわからないんだけど。文法の問題だと思って教えてもらえるとうれしい。
先生:文法的には、これだけで本当にトライしたかどうかはわからない。だってそれに言及していないもの。
わたし:結局この人は、トライした?してない?
先生:そう意味では、おそらくトライしたと思う。
えー!そうなんだ・・・・。
なぜそれがわかるの??
助動詞+have+過去分詞のとらえ方
わたしが、この人はマシンにトライしていないんじゃないかと思った理由は、このツイートに助動詞+have+過去分詞が使われていたからです。
助動詞+have+過去分詞は、私の中では、しなかったこと、すればよかった後悔のイメージが強いため、この場合はトライしていないんじゃないかと思ったのです。
日本人にはあまりなじみがない助動詞+have+過去分詞ですが、会話では高い頻度で使われます。めっちゃ使ってる!!って感じです。
could have tried・・・(わたしだって)トライできたのに!(しなかった)
would have tried・・・(だったら)トライしたのに!(しなかった)
should have tried・・・トライするべきだったのに!(しなかった)
この3つは代表的によく使われています。スーパーマーケットのレシートに「当店のポイントカードを持っていれば今回の買い物で○○ポイント獲得できていました」などの文言にもこういった助動詞+have+過去分詞は使われています。
if を使う仮定法の中にも出てきますね。試験のための英語を勉強している方はそのイメージが強いかと思います。
今回出てきたのは、may have tried という、助動詞が may の場合です。
may have tried・・・トライしたかもしれない(けどしなかったかもしれない)
あ・・・、確かにこれだけだと、したのかしなかったのかわからないですね。
may の過去形 might でも同じような意味になりますが、might のほうがもっとありそうじゃないイメージで使われます。(would、couldが、現在から少し遠ざかるとき(ちょっと現実味が薄れるとき)に使われるのと同じイメージです)
わたしは、助動詞+have+過去分詞を「すればよかった」というイメージでとらえ過ぎていたので、may have tried も「トライしていない」と思いこんでしまったようです。
確かにわたしも、Have you watched the movie? (その映画観たことある?)と誰かに訊かれたときに、I might have.(観たかも。忘れた!)と、どちらかわからないニュアンスで答えたことありますね。
なぜネイティブスピーカーは”高い確率でトライした”と判断したのか
さて、may have tried は「トライしたかもしれない」という意味ですが、確かにこれだけではトライしたかもしれないし、してないかもしれない、とどちらの意味にもとれます。文法的にはこれだけではどちらかわかりません。
にもかかわらず、なぜネイティブスピーカーは「トライした」と判断したのか。
それは、このツイートの小さな部分です。
I … may have tried this coffee machine
just to see how it works/hear the song it plays.
Hi, I’m Kate.
I の後の … の部分で含みを持たせていることで、この人はちょっといたずらっぽい感じを出していること。わたし、したかもしれないし、してないかもしれない♪というまるで読んだ人を(悪い意味でなく)からかっている雰囲気がでていること。
そして、最後の Hi, I’m Kate. の部分。これに対して先生は「なぜこのひと言が入るのかはわからない。この人が誰なのかは知らないけど、きっとフォロワーも多い人気者なんでしょうね。フォロワーに対しての挨拶で、だってわたしKateだもの。わかるでしょ?わたしはトライしたのよ、こういうとき、Kateはトライするのよ、と言ってるのではないか?」と。
なるほど!それはあるかも・・・。わたしは may have tried にとらわれ過ぎていて、ツイート全体を見ることはしていませんでした。
いや、言葉って深いです。
※記事をよく見ると、ツイート主Kateさんは米放送局「CNN」のホワイトハウス担当ケイト・ベネット記者とあります。すごい有名人ででした。
その後気づいた「これはトライしたな」と確信した要素
オンライン英会話のレッスンが終わってから、このツイート主のほかのツイートをいくつか見てみました。Hi, I’m Kate. のひと言が日常的にツイートに入っているかどうか気になったからです。でも、そんなことはありませんでした。
ここで、わたしは気づきました。
この Hi, I’m Kate. は、フォロワーに対してではなく、もしかして自販機に対しての挨拶ではないかと。
I … may have tried this coffee machine just to see how it works/hear the song it plays. Hi, I’m Kate. pic.twitter.com/9ibKwTQwwH
— Kate Bennett (@KateBennett_DC) July 22, 2021
こういうすごい自販機って、しゃべったりしますよね。これにはモニターもついてるし、映像付きで何らかの音が出てたはず。もしかしたら、お金を入れると使い方を説明してくれるのかもしれません。
それに対して、 Hi, I’m Kate. と挨拶をしたのだとしたら・・・。
これ、トライしましたね(確信)
海外から来た人の反応を見るのは楽しい
パンデミックの中オリンピックを開催することについては複雑な気持ちがあります。
でも、選手や関係者がこのように日本の文化に反応してくれるととてもうれしい気持ちになります。他にも、日本のコンビニに感動したなんてツイートも見かけましたし、日本を楽しんでくれて、新鮮な視点でレポートされるのを見ると誇らしい気持ちにもなります。もちろん、過酷な日本の夏(気温、湿度)についてもたくさんシェアされていますが。
オンライン英会話の先生も、この自販機の写真には喰いついて「いったい何種類の飲み物が買えるの?全部説明して!!」と興奮していました。ミルクシェイクも買えるみたいと言ったら、それはすごいわ、とびっくりしていました。
しばらくは、こういった「日本すごい!」また「日本ヤバい!(本当の意味で)」というツイートがメディアを騒がせるのでしょう。
きちんと書かれた英文も勉強になりますが、ネイティブスピーカーが普段使っている英語がどんなものなのかを知るいい機会ですね。SNSの英語にはあまり触れてこなかったけれど、日本に関するツイートなら親しみもあるし、しばらく楽しみたいと思います。